30秒でわかる!この記事の要点
- 消防設備士が「やめとけ」と言われるのは、主に無資格・未経験の下積み時代の待遇や、一部の過酷な現場イメージが先行しているため。
- 「消防法による設置義務」と「膨大な建物ストック」により、仕事がなくなることは構造的にあり得ず、極めて安定している。
- 年収を上げるルートは確立されており、資格取得や施工管理へのステップアップで高収入が可能。
(参考:施工管理へのキャリアパスについては、こちらの記事で詳しく解説しています)
はじめに:消防設備士は本当に「食いっぱぐれる」職業なのか?

就職や転職を考えて「消防設備士」と検索窓に入力したとき、サジェスト(予測変換)に出てくる言葉にドキッとしたことはありませんか?
「消防設備士 やめとけ」「消防設備士 食いっぱぐれ」「消防設備士 きつい」……。
これから新しいキャリアを目指そうとしている時に、このようなネガティブなワードを目にすれば、誰だって不安になるものです。「せっかく資格を取っても、将来性がないなら意味がない」「生活できないような給料なら続けられない」と考えるのは当然です。
しかし、現場の最前線を知る私たちからすれば、「消防設備士ほど、安定して食いっぱぐれのリスクが低い職業は、建設業界の中でも稀である」と断言できます。
では、なぜこれほどまでにネガティブな噂がネット上に溢れているのでしょうか?そして、実際のところ稼げる仕事なのでしょうか?
この記事では、業界に蔓延するネガティブな噂の正体を解き明かし、データと現場の実感に基づいた「本当の将来性」と「年収アップの具体的な道筋」を、プロの視点で徹底検証します。
1. ネットで散見される「やめとけ」の正体とは?

火のない所に煙は立たないと言いますが、消防設備士に関するネガティブな噂には、誤解を生む明確な理由と背景があります。まずはその正体を直視してみましょう。
理由①:見習い期間の給与水準と「隣の芝生」
「給料が安い」という口コミの多くは、未経験・無資格で入社したばかりの「見習い期間」の方によるものが大半です。
確かに、資格もスキルもない状態では、給与は一般的な水準からのスタートになります。特に消防設備士は「資格ありき」の業務独占資格であるため、資格を持っていない間はできる仕事が限られ、補助的な業務(荷運びや掃除、簡単な手伝い)が中心となります。
この時期の待遇だけを切り取って、IT業界や営業職などの成果報酬型の仕事と比較し、「稼げない」「割に合わない」と発信されてしまうのです。しかし、これは技術職であればどの業界でも同じこと。重要なのは「その後の伸びしろ」です。
理由②:誰でも受験できる「乙種6類」のイメージ
消防設備士の資格には、学歴や実務経験などの受験資格が必要な「甲種」と、誰でも受験できる「乙種」があります。
特に消火器を扱う「乙種第6類」などは、比較的手軽に取得できるため、多くの人が最初に挑戦します。そのため、「参入障壁が低い=誰でもできる簡単な仕事=市場価値が低い」という誤ったレッテルを貼られがちです。
しかし実際には、スプリンクラーや泡消火設備、自動火災報知設備といった複雑なシステムを扱うには、電気や機械、配管に関する高度な専門知識が必要不可欠です。上位資格を持つ技術者は非常に希少価値が高く、決して「誰でもできる仕事」ではありません。
(※各設備の仕組みについては、スプリンクラーの解説記事や泡消火設備の解説記事をご覧ください)
理由③:現場仕事特有の「きつさ」
「きついからやめとけ」と言われる理由の一つに、勤務時間や作業環境があります。
例えば、商業施設やオフィスビルの点検・工事は、お客様がいない夜間や休日に行われることがあります。また、天井裏での配線作業や、消火ポンプ室などの狭い場所での作業では、ホコリや油で汚れることもあります。
こうした「現場仕事ならではの大変さ」を嫌う人が、「やめとけ」という言葉で表現することがあります。しかし近年は、業界全体で働き方改革が進んでおり、休日休暇の確保や手当の充実など、労働環境は劇的に改善されつつあります。
2. それでも「食いっぱぐれない」と断言できる3つの構造的理由

一部のネガティブな声を覆すだけの、圧倒的な「安定性」がこの仕事にはあります。AIや不況が来ても、この仕事がなくならない3つの絶対的な理由を解説します。
① 不況に無敵の「消防法」という最強の盾
消防設備士の仕事は、すべて「消防法」という法律に基づいています。
消防法第17条により、一定規模以上の建物には消防用設備の「設置」と「点検」が義務付けられています。これは「やったほうがいい」というレベルではなく、「やらなければ法律違反になる(罰則がある)」という強制力を持った義務です。
景気が悪くなったからといって、建物のオーナーが「今月はお金がないから点検をやめよう」とすることはできません。つまり、景気変動の影響を極めて受けにくい、常に一定の需要が発生し続ける「安定需要」が約束されているのです。
(※消防法改正による業界への影響は、こちらの記事で詳しく解説しています)
② 日本中に積み上がる「建物ストック」という巨大市場
建設業界というと「新築工事」をイメージするかもしれませんが、消防設備士の主戦場はそれだけではありません。日本中にはすでに数えきれないほどの「既存の建物(ビル、マンション、工場、商業施設など)」が存在します。
これら全ての建物に対して、半年に1回の機器点検、1年に1回の総合点検を行うことが法律で決まっています。さらに、点検で見つかった不備を改修する工事や、老朽化した設備の更新工事(リニューアル)も発生します。
新築着工件数が減ったとしても、既存の「建物ストック」が存在する限り、消防設備士の仕事がなくなることは物理的にあり得ないのです。
(※点検で見つかる不備の具体例については、こちらの記事が参考になります)
③ AI・ロボットが苦手な「アナログな現場判断」
「将来、AIに仕事を奪われるのでは?」と心配される方もいるでしょう。しかし、消防設備の現場は、AIが最も苦手とする領域の一つです。
例えば、誤作動の原因調査。感知器の誤作動一つをとっても、原因は「結露」「ホコリ」「エアコンの風」「配線の経年劣化」など多岐にわたります。現場ごとの異なる構造、湿気や空気の流れ、建物の使われ方などを五感を使って総合的に判断し、特定する作業は、今のロボットには不可能です。
複雑に入り組んだ天井裏での配管や配線作業も同様で、現場を知る「人間」の価値は、今後も下がることはないでしょう。
(※感知器トラブルの奥深さについては、誤作動の原因解説記事をご覧ください)
3. 消防設備士に向いている人・向いていない人【適性診断】

安定しているとはいえ、仕事には向き不向きがあります。ミスマッチを防ぐため、ご自身の適性をチェックしてみましょう。
向いている人
- コツコツとした作業が得意な人: 点検業務は、数多くの項目を正確にチェックしていく作業です。真面目にルーチンワークをこなせる人に向いています。
- 機械いじりや仕組みを知るのが好きな人: ポンプやセンサーがどのような仕組みで動いているのか、興味を持って学べる人は成長が早いです。
- 責任感が強い人: 自分の仕事が「人命」に関わるということを理解し、手抜きをせずに取り組める誠実さが求められます。
- 安定志向の人: 派手な成功よりも、長く安心して働ける環境を求める人に最適です。
向いていない人
- デスクワークだけで完結したい人: 現場に出向いて体を動かす仕事が基本です。
- 細かいルールを守るのが苦手な人: 消防法という法律や基準を遵守しなければならないため、大雑把すぎる性格だと苦労するかもしれません。
4. 勝ち組になるための「年収アップ」ロードマップ

「食いっぱぐれない」だけでなく、しっかりと「稼げる」消防設備士になるためには、戦略的なキャリア形成が必要です。漠然と働くだけでなく、以下のステップを意識してみてください。
ステップ1:資格手当でベースを固める
消防設備業界は、資格がモノを言う世界です。多くの企業で、資格保有数に応じた「資格手当」が支給されます。
一般的な相場としては、乙種で月額数千円、甲種で月額数千円〜1万円程度の手当がつくことが多いです。複数の類を取得すれば、それだけで月数万円、年間数十万円の年収アップに直結します。
まずは需要の高い「乙種6類(消火器)」や「甲種4類(自火報)」から取得し、徐々に甲種1類(スプリンクラー)などの高難易度資格へと幅を広げましょう。
(※資格の種類や勉強法については、4類勉強法の記事や資格完全ガイドで詳しく解説しています)
ステップ2:現場作業員から「施工管理」へ成長する
現場で経験を積んだ後は、「施工管理(現場監督)」へのステップアップを目指しましょう。
自ら作業するだけでなく、協力会社の手配、工程管理、予算管理、安全管理など、プロジェクト全体をマネジメントする立場になると、年収は大幅に上がります。
施工管理技士の資格を取得すれば、さらに評価は高まり、年収500万円〜600万円、あるいはそれ以上を目指すことも十分に可能です。
ステップ3:電気工事士との「ダブルライセンス」で希少価値を出す
消防設備(特に警報系)は電気で動いています。そのため、「電気工事士」の資格を併せ持っていると、現場での評価が劇的に上がります。
「電気工事もできる消防設備士」になれば、電源工事から機器設置、配線接続まで一人で完結できるため、会社としても手放せない人材となり、高待遇で迎えられます。
(※電気工事士からのスキル活用については、こちらの記事を参考にしてください)
まとめ:資格はあとからでも大丈夫。「安定」への一歩を踏み出そう

「消防設備士はやめとけ」という言葉は、ごく一部の側面、あるいは未経験時代の苦労を切り取ったものに過ぎません。
その実態は、消防法という法律と、日本中に存在する建物ストックに支えられた、極めて安定性が高く、将来性のある職業です。
ここまで資格や年収の話をしてきましたが、私たち林明工業では、入社時点での資格の有無は問いません。
「今は資格がないけれど、これから手に職をつけたい」
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そんな熱意のある方であれば、未経験からでも大歓迎です。現場で経験を積みながら、必要に応じて資格取得を目指せる環境を整えています。食いっぱぐれないプロフェッショナルへの第一歩を、林明工業で踏み出してみませんか?
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