【自火報トラブル解決】自動火災報知設備の「誤作動」はなぜ起こる?主な原因と点検のポイント

はじめに:その警報音、本当に火事ですか?「非火災報」の謎


深夜や早朝、突然けたたましく鳴り響く火災報知器の警報音。慌てて確認すると、火の気はどこにもない…そんな「誤作動」を経験したり、耳にしたりしたことはありませんか? 火災ではないのに警報が鳴ることを、専門用語で「非火災報(ひかさいほう)」と呼びます。これは、消防設備の中でも最も身近な「自動火災報知設備(自火報)」で最も多いトラブルの一つです。 なぜ、このような誤作動が起こるのでしょうか?そして、消防設備点検のプロは、どのようにしてその原因を突き止め、解決しているのでしょうか。この記事では、自火報の誤作動の主な原因と、それを防ぐ点検の重要性について解説します。



1. 「非火災報」はなぜ起こる?主な原因を徹底解剖

非火災報の原因は非常に多岐にわたりますが、大きく分けると「感知器の要因」「経年劣化」「人為的要因」「その他の環境要因」に分類できます。


原因1:感知器の要因(環境とのミスマッチ)

感知器は非常に敏感なため、火災以外の煙や熱にも反応してしまうことがあります。


煙感知器の誤作動

  • 湯気や蒸気: 浴室や給湯室、調理場からの湯気や蒸気を「煙」と誤認識してしまう。
  • 調理の煙: 煙感知器の近くで魚を焼いたり、煙の多く出る調理をしたりした場合。
  • ホコリ・虫の侵入: 感知器の内部に溜まったホコリや、小さな虫(クモなど)が入り込むことで、煙と誤認識される。
  • 結露: 急激な温度変化で感知器内部が結露し、回路がショートして作動することも。


熱感知器の誤作動:

  • 調理器具や暖房器具の熱: コンロの真上や、エアコン・ストーブの熱風が直接当たる場所に設置されていると、火災でなくても作動温度に達してしまう。
  • 西日や直射日光: 夏場の強い西日などが感知器に長時間当たり、高温になる場合。



原因2:設備の経年劣化による要因

消防設備も機械である以上、寿命があります。


感知器本体の寿命

感知器の耐用年数は、一般的に10年~15年程度とされています。古くなると電子部品が劣化し、誤作動を起こしやすくなります。


配線の劣化

建物の配線が長年の間に劣化し、絶縁不良などを起こして微弱な電流が流れ、火災信号として受信機に送られてしまうケース。


原因3:人為的な要因

人の行動が引き金になることも少なくありません。


殺虫剤(燻煙・噴霧タイプ)

殺虫剤の煙や粒子を、煙感知器が火災の煙と誤認識してしまう。


清掃や作業中の接触

掃除用具や脚立、引越しの荷物などが感知器にぶつかり、衝撃で作動したり、破損したりする。


発信機(押しボタン)の操作

火災報知器の発信機(赤いランプがついた押しボタン)が、いたずらや、誤って押されてしまう。



2. 点検のプロはどう見抜く?原因特定と点検のポイント

非火災報が発生した際、消防設備点検のプロフェッショナルは、単に警報を止めるだけではありません。豊富な知識と経験に基づき、その根本原因を突き止め、再発防止に努めます。


ポイント1:徹底したヒアリング

まず、建物の管理者や居住者から「いつ(時間帯)」「どの場所で」「どんな状況で(調理中だった、掃除中だった等)」警報が鳴ったかを詳しく聞き出します。これが原因を絞り込む最大のヒントになります。


ポイント2:受信機と現場の確認

受信機(火災報知器の親機)の履歴や表示を確認し、警報を発した「警戒区域(エリア)」を特定します。その後、実際にその場所へ行き、設置されている感知器の種類と、周囲の環境(湯気の出る場所はないか、エアコンの風が当たらないか、汚れていないか等)を照合します。


ポイント3:専門機器による試験

感知器が正常に機能するかどうかを、専用の試験機(加煙試験機、加熱試験機など)を使ってテストします。これにより、感知器自体の故障なのか、それとも環境要因なのかを切り分けます。


ポイント4:再発防止への「提案」

原因を特定したら、プロの視点から再発防止策を提案します。これが非常に重要な役割です。


  • 例1:湯気による誤作動が多い場合 → 「この場所には湯気に強い防水型の熱感知器への交換が適しています」
  • 例2:ホコリによる誤作動の場合 → 「感知器内部の清掃頻度を上げましょう」
  • 例3:殺虫剤が原因の場合 → 「燻煙タイプの殺虫剤を使用する際は、事前に感知器にカバーをしてください」と注意喚起を行う。



3. 「非火災報」を放置するリスクと点検の社会的な意義

「火事じゃないなら、まあいいか」と非火災報を放置することは、非常に危険です。


最大の危険:「オオカミ少年」状態になること

誤作動が何度も続くと、建物にいる人々が警報音に慣れてしまい、「また誤報だろう」と本物の火災が発生した際に避難が遅れる可能性があります。これが最も恐ろしいリスクです。


消防機関への負担

非火災報でも、通報があれば消防車は出動します。誤報の出動が増えれば、本当に助けを必要とする火災への対応が遅れる事態にも繋がりかねません。


消防設備点検のプロの仕事は、単に設備をチェックするだけではありません。非火災報の原因を究明し、適切な対策を講じることで、火災報知器の「信頼性」を守り、人々の防災意識を維持するという、極めて重要な社会的な意義を担っているのです。



まとめ:設備の「信頼性」を守る、技術と経験が活きる仕事

自動火災報知設備の「非火災報」は、その原因が多岐にわたるため、特定と解決には高い専門知識と豊富な経験、そして鋭い洞察力が求められます。これこそが、消防設備士(特に第4類)の腕の見せ所であり、技術者としての面白さ、やりがいが詰まった仕事と言えるでしょう。


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